九月は留学生の新学期。上智大学では九月中旬に新しい学生が来日する。
初めてホームステイを引き受ける家庭では、お客様扱いをする家族が多い。旅行や観劇・カラオケ・レストラン等に招待して多額の出費をして、ボランティアとして国際交流に貢献したと思っている日本人は多い。
特にロータリークラブの会員はその傾向が強い。高校時代に来日し、夏休みの一ヶ月間大歓迎を受けた学生達が日本にあこがれ、大学でまたやってくる。高校時代にホームステイした家族をまた訪ねる。遠くの場合は、新幹線や飛行機の切符を送ってきて、旅行にも誘う。一泊3万円もする旅館に泊まったと話す学生もいる。
ベジタリアンならぬ肉タリアンの学生に、高級和牛肉を宅急便で送ってくる肉屋の経営者もいた。可愛い女子学生には着物や浴衣一式が送られてくることもある。
そんな学生が普通の家庭に来ると、不満が爆発する。そこで、私は学生に言った。「それじゃあ、ロータリークラブの会員の所にステイしたら?」 早速、学生はステイ先を探した。しかし、引き受ける家庭はなかった。「一週間ならいいが、一年は無理」と言われた。
学生達もさめた目で見ていることもある。川原のバーベキューに行ったら、ミンクのコートを着てきた奥さんがいた。
ホームステイは家族の一員という気持で受け入れるが、金銭的には別ということをはっきりしておいた方がよい。特に、電話代などはたとえ市内で安くてもきちんと支払ってもらうのがよい。そこをルーズにするといろいろな問題が起こる。
よくあるケースは最後の月の電話代は後で請求がくる。以前は電話料金も高かった。国際電話など高額の請求がきた。こっそり電話を使ったまま、帰国する。
最近は携帯電話が普及して、留学生も持つようになった。便利であるが、料金が高い。真夜中に家庭の電話で、友達の携帯電話と長話をする。最後にきた請求書は学生の分が、15000円位のこともあった。
学生達がホームステイを希望する目的は、日本語が上手になりたい!日本とはどんな国か?どんな生活をしているのか?を知りたいからである。最近のアメリカ人はホームステイをして、アメリカの生活をしたいという学生もいる。そんな学生に、「ここは日本で、私達の生活はこうです。もし嫌だったら出ていってください」とにっこりして言う。しかし、まだ出ていった学生はいない。学生達は「駄目もと」でいろいろな要求をしているだけである。
ホストファミリーは、留学生からいろいろな文化や生活や食べ物のことなどを教えてもらう。彼らからの一番大きなプレゼントは、私達の頭を軟らかくしてくれることである。
日本的な考え方ややり方が変だと思うことも多い。日本中で改革のかけ声は上がっているが、なかなか進まない。日本の良さを失わないで、変わっていってほしい。
私達ホストファミリーは、お金をかけずに暖かい心をいっぱいにして新しい学生を迎えたいと思う。